■1000万円の金の落とし物

 大金を落としたり、置き忘れたりすることはありますが、それでは金(ゴールド)を落とす人はいるでしょうか? それが、いたのです。

 1994年2月2日、東京・豊島区にあるJR大塚駅の東側のガード下のゴミ捨て場からこれまでに類を見ない大量の金が落ちているのが発見されました。これは金属製のケースに入っていたもので、中には1キロの金の延べ板7~8枚と500グラムの延べ板1枚、それに米国、メキシコなどの金貨と銀貨計6枚が入っていました。金の延べ板は「スイス銀行」と、純度99.99%を示す刻印が打ってありました。現在の時価では5000万円近くにもなります。

 何か犯罪のにおいもいたします。それにしてもこの金の落とし物、日本においては史上最高額かもしれません。落とし主は現れず、6カ月と14日後の8月16日、法律により拾得者のものになりました。それにしても、なんともったいない話ではありませんか。

■当時3500万円の純金ブラジャー

 イヤリングにネックレス、そしてブレスレット。金を使った装身具はいろいろありますが、純金製のブラジャーが発売されたことがあるのをご存じですか。

 これは女性下着メーカーと非鉄金属の大手企業が共同で作ったもの。直径25ミクロンの24金の糸を使って手縫いで作り上げたものです。生地から肩ひも、ワイヤまですべてを金で作っており、使った金の量は352グラムだそうです。非売品だけに価格はついていませんが、強いてつければ3500万円ほどになるとのことです。

 もっとも、金の価値は当時の価格で44万円にしかなりません。そこで金のブラジャーの値段のうち99%近くは開発費や手間賃ということになります。金の分がたった44万円では、いざというとき、「金のブラジャーをつけて亡命」といってもあまり価値はなさそうです。しかも、この352グラムという重さは、通常のブラジャーの10倍以上だとか。へたにつけたら肩が凝って仕方ありませんね。やはり、眺めてため息をついているくらいが無難でしょう。

○著者/岡本匡房(おかもと・まさふさ)/市場経済研究所顧問
1941年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。編集局整理部、編集局商品部次長、産業第三部次長、川崎支局長、地方部次長、同編集委員、日経産業消費研究所商品研究部長などを経て現職。主な著者に『ゴールドハンドブック』『金ちょっとおもしろい話』『商品先物市場と日本経済』など。

※アエラ増刊『AERA with MONEY 毎月3000円で純金投資』の記事に加筆・再構成