劇中、7人が一貫して見せるのは、「プロ意識」だ。

 例えばJUNG KOOKは、ソウルコンサートで自らが起こした一瞬のハプニングを許せず、2カ月たったパリ公演のあとにまで、悔しさをにじませる。いつもにこにこしているイメージの強いJ-HOPE(ジェイホープ)は、ライブをモニタリングしながら、普段テレビの前では見せない顔をのぞかせ、音楽面での“チームの要”SUGA(シュガ)は、「寝る時間すらない」と嘆きながらも、自らに課せられた仕事に打ち込む。その姿は「プロだから」という言葉では説明できないほどストイックだ。

 BTSはデビュー以来、全てのステージ、全ての曲に、一寸の妥協も許さず、一つ一つの動作に魂を込め、全力投球してきた。たとえ、満身創痍の状態だったとしても、だ。映画でもそんな“BTSの代名詞”と言えるパフォーマンスシーンがふんだんに登場する。7人がステージで歌って踊る姿は「まぶしい」の一言だ。だが、それまでの映像を見ていれば気づくはずだ。その輝きは決してスポットライトの光ではなく、彼らのひたむきさから生まれていることを。次のステージに立つまでの苦悩と努力、彼らの血と汗と涙の結晶だということを。

 プロフェッショナルな顔を見せる一方で、彼らは20代の青年らしい顔も覗かせる。

 特に印象的だったのは、「些細なこと」に幸せを感じる姿だ。異国のレストランで出された庶民的な韓国料理にテンションを爆上げし、オヤジギャグで盛り上がる。公園を散歩しながら「外の空気に当たると、生きた心地がする」とつぶやき、プライベートジェットに乗り込めば、平行まで倒れる椅子のリクライニングに声を上げて感動する。ワールドスターになった今も、彼らの幸せはそんな些細なことだったりする。裏を返せば、そんな普通のことが難しい環境だということだろう。彼らの無邪気な姿を観るとそれが少し不憫に感じたりもするが、「普通の感覚を忘れていない」姿にホッとしたりもする。

 これまで、誰も想像できなかった多くのことを成し遂げてきたBTS。彼らがなぜここまで世界で愛されるのか、今までのグループと何が違うのか。はっきりとはつかめないでいた。

 だが、それが今はわかるような気がする。その答えが、この映画にはある。

AERA 2019年8月12・19日合併増大号