高橋は、滑りと同じくらいの比重でセリフがある演出に挑戦した。共演した役者たちから刺激を受けたという(撮影/写真部・加藤夏子)
高橋は、滑りと同じくらいの比重でセリフがある演出に挑戦した。共演した役者たちから刺激を受けたという(撮影/写真部・加藤夏子)

 高橋大輔主演、宮本亜門が演出を手がけた「氷艶hyoen2019─月光かりの如く─」が7月26日からの3日間、横浜アリーナで計6講演行われ、大反響を呼んだ。高橋をはじめとするフィギュアスケーターや役者たちの挑戦が、氷上で新たな芸術を生み出した。

【写真特集】高橋大輔が挑んだ「氷艶2019」

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フィギュアスケートを始めたころ、スケートを通じこのようなエンターテインメントにかかわるとは思ってもみませんでした」

 主演を務めた高橋大輔(33)は初日の後、こうコメントした。

 単なる和風のアイスショーではない。スケーターはセリフに挑戦し、俳優はスケート靴を履いて演じる。さらに海外スケーターらが「和」を解釈し、チームラボによる映像演出、和太鼓、美しい衣装、B’zの松本孝弘によるテーマ曲、歌手の平原綾香による熱唱と、てんこ盛り。誰も見たことのない総合芸術といえる作品が誕生したのだ。

 高橋はセリフが満載のうえ生歌も披露。しかも殺陣やワイヤーアクション、そしてラブシーンまである。

「今回はセリフあり、歌ありと不慣れな部分がありましたが、新しい挑戦にやりがいを感じました」(高橋)

 物語は、宮本亜門の演出による新説「源氏物語」というコンセプト。月光に照らされた都に、高橋演じる第二皇子、光源氏が誕生するシーンで始まる。青年になった源氏が町の民にもてはやされる場面では、軽快でコミカルなステップを披露。インカムをつけた高橋が、「私は月。太陽には敵わぬ」と、第一皇子、朱雀(すざく)への憧れとライバル心の入り交じる心を語る。

 一方、源氏を憎しみの目で見つめるのは朱雀の母、弘徽殿(こきでん)を演じる荒川静香(37)。源氏を追い詰めていく、鬼母である。

「横浜アリーナという大きな会場で、どの座席にも届く、後ろから見ても伝わる表現に挑戦したい」

 と荒川は話していたが、まさに邪悪なオーラの溢れる立ち姿だけで、会場の空気を変えていた。源氏の暗殺をくわだてる場面では、十二単(ひとえ)風の重い衣装をまといながら、荒々しく力強いスケートを披露した。

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