実はこの考え方自体は古くからあるものです。私が1983年丸紅に入社したときに上司から口を酸っぱくして言われたのは「毎日毎日漫然と会社に来るな。一個人が、山口商店、木下商店として稼いだ収益の合計が部の、ひいては丸紅の収益となるのだから、一個人の収支を常に考え行動せよ」ということでした。

 この考え方はその後のウォールストリートでのビジネスでも大いに役に立ちました。特に外資系証券会社では常に結果が求められますが、給料をもらう限り当然で、どれだけの収益を出すかだけが勝負です。人事評価では会社へのロイヤルティーやチームワークなども評価されるわけですが、基本は個人の収支です。お陰様で全く違和感はありませんでした。その後、査定をする立場になったとき、縁の下の力持ちとしてやった部分を評価してほしいという部下がたくさんいましたが、当然却下です。そういう組織では縁の下の力持ちと称するぶら下がり社員は必要ない。稼げるやつはどんどん稼ぎ、稼げない奴は去っていくのみ。となると一番合理的なのは個人事業主となって会社と契約して、その会社に与えた収益から手数料をもらう、というやり方になるでしょう。

 会社は無駄な人材に金を払う必要がありませんし、タニタの例でいうと採用の時からそういうことが出来る人を採用しますよ、上からの命令を聞いているだけではだめですよ、と宣言しているわけです。これが本当の働き方革命と言うべきで、日本は間違いなくその方向に向いていきます。

AERA 2019年8月12・19日合併増大号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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