ボリス・ジョンソン氏。失言を繰り返す反面、国民からは親しみを込めて「ボリス」と呼ばれることも多い(c)朝日新聞社
ボリス・ジョンソン氏。失言を繰り返す反面、国民からは親しみを込めて「ボリス」と呼ばれることも多い(c)朝日新聞社

 EUから「必ず離脱する」と主張して英国の首相に就いたボリス・ジョンソン氏。「失言王」「英国のトランプ」と呼ばれながらも首相に上りつめた理由とは。

*  *  *

 英国の新首相に選ばれたボリス・ジョンソン氏(55)は、3年前に行われた欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票で、離脱派の中心だった人物だ。2012年のロンドン五輪の際には、ロンドン市長として五輪を成功させ、メイ前政権では一時外相を務めた。一部にカリスマ的な人気がある半面、事実に基づかない主張や物議を醸す発言も多く、好き嫌いの分かれる政治家だ。そのポピュリスト的な言動から「英国版のトランプ」とも呼ばれる。

 ジョンソン氏のトレードマークは、クシを入れないボサボサの金髪。2度の離婚を経て、現在は31歳のガールフレンド、キャリー・シモンズさんがいる。彼女は、ファーストレディー(首相夫人)ではなく、「ファースト・ガールフレンド」として、官邸で首相と暮らす英史上初めての例になった。トランプ米大統領との共通点は、特異な髪形や年齢の離れた若い女性が好きという点だけではない。自由貿易の推進よりも自国第一的な主張を掲げ、グローバル化による経済格差で取り残された人々を支持層の中核とする点でも2人は似通う。

 首相就任に際してのスローガンは「英国の将来を信じよう(ビリーブ・イン・ブリテン)」。就任直後の7月24日、首相官邸前の演説で、離脱後の英国の行方を危惧する人々を懐疑派(doubters)、悲観論者(doomsters)などと決めつけてこき下ろした。その上で10月31日に設定されている離脱の期限までにEUと合意できなくても離脱すると強調した。「米国ファースト」を掲げて、メキシコとの国境に壁を造ろうとするトランプ氏と大西洋をはさんで共鳴する。

「首相としてすばらしい仕事をするだろう。(米国と)非常に良好な関係になる」

 トランプ氏はジョンソン氏の首相就任を祝ってホワイトハウスでこう語った。英国にEUからの離脱を促してきたトランプ氏は、EUと協調しながら離脱の道を探ったメイ前首相よりもジョンソン氏に親近感を持つ。

次のページ