韓国は日本を牽制するために、これを使いたいという思惑もあると思います。しかし、そうなれば日米韓3カ国の安全保障上の連携を揺るがすことになりかねず、米国の介入が本格化するかもしれません。

 対馬海峡上空を中ロの戦闘機が飛行した共同警戒監視活動や北朝鮮のこれまでとは違うタイプの短距離ミサイルの発射など、日韓の軋轢と日米韓の連携を試すような挑発が相次ぎ、北東アジアの地域の安保環境が揺らぎつつあります。日韓の対立がさらにエスカレートし、制御できなくなった時、不測の事態も覚悟しなければならなくなります。

 また、日韓の間の輸出管理の強化、あるいは輸出規制は結果としてHUAWEIなどの中国企業に塩を送ることになりかねず、事態は日韓両国の思惑を超えてより複雑かつ広範に波紋を広げることになるでしょう。日韓の両当局者の自粛と歩み寄りを願わずにはいられません。

※AERA 2019年8月12・19日合併増大号

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姜尚中

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

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