ライオンの女の子であるレオナがペリカンのムワリとアフリカ中を旅するという物語です。レオナが実際に訪れる場所や起こった出来事は、すべて私自身が経験したことです。音楽での経験からも、“本当のこと”だけが強く伝わると思っているから、それを書こう、と。もちろん、そこにはアフリカが抱える問題もありますが、私が一番感動した文化や音楽や心を大切にしたいと思いました。

 アフリカで暮らす人々は、心が豊かです。人と人とが密接に付き合っていくことが日本ではどんどん難しくなってきていますが、彼らは心と心のつながりが強い、と感じています。

 アジア人が射殺された数日後にケニアのスラムに行ったとき、アーミーに警護してもらいながら、現地に入ったこともあります。でも、そういう場所で子どもたちは毎日を生きている。そこから紡ぎだされる思いや気持ちは、“命のメッセージ”なんですよね。それを日本の子どもにも伝えたいと、はじめてアフリカに行ったときから思っていました。

 大人から子どもまで、わかりやすい形で伝えるにはどうすればいいか。大人が理解していないと本当の意味で子どもには伝わらない。そう考えて、絵本にしました。絵本を一緒に読んで、大人が子どもに伝える。そんなふうにつながっていけばいいな、と思っています。

 今年6月から、日本の大学でアフリカに関する講演もスタートさせた。学生と直接話すからこそ得られた気づきもあったという。

 日本がアフリカからどれだけ恩恵を受けているかということは、意外と知られていないんです。「どんな食べ物がアフリカから輸入されているか知っていますか」と聞くと、大阪では「タコ」と即答。とても大阪らしいですよね(笑)。実際、日本に入ってきているタコの60%はモーリタニア産です。だけど、それだけじゃない。カカオ豆も60%以上がアフリカから、女性に人気のルイボスティーもアフリカの一部エリアでしかとれないものです。そう話すと、みんな「え!」って。アフリカからの恩恵を知れば、もっとアフリカを身近に感じられるようになるのではと思います。

 もう一つ印象的だったのは、実際にアフリカで活動したことのある学生に「支援のゴールはなんですか?」と聞かれたこと。「支援が終わったら、関係性は切れるのだろうか」という疑問が私のなかにも湧いてきて、それはすごく寂しいなって。「友達のためになにができるか」考えたとき、なにかを達成できたら、その後はきっと「よかったね!」と言って、一緒にご飯を食べると思うんですよね。そんなふうに友情は続いていく。

 まずは「えいや!」って知ろうとしてみてほしい。人は「知る」ことで、無意識に行動も変わっていく。私はそう思っています。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2019年8月5日号