【サーフィン】技術もハートもノースショア育ち 前田マヒナ(まえだ・まひな、21)/1998年、米ハワイ州・オアフ島生まれ。フェザンレーヴ所属。マヒナはハワイ語で「月」。162センチ、62キロ(写真:gettyimages)
【サーフィン】技術もハートもノースショア育ち 前田マヒナ(まえだ・まひな、21)/1998年、米ハワイ州・オアフ島生まれ。フェザンレーヴ所属。マヒナはハワイ語で「月」。162センチ、62キロ(写真:gettyimages)

 来年の東京オリンピックの新競技として、新たにサーフィンが加わった。女子日本代表として、技術もハートもノースショア育ちの前田マヒナが出場する。

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 9月に宮崎県で行われるワールドサーフィンゲームスで、女子日本代表の前田マヒナ(21)が五輪出場権を与えられるアジア1位を目指す。

「宮崎で優勝して、日本の人たちに私を知ってほしい。マヒナという名前ですが、両親とも日本人なんです。家では頑張って日本語で話すようにしてるけど、面倒なときは英語。アハハハ」と無邪気に笑う。

 生まれも育ちもハワイ・オアフ島。ビッグウェーブが押し寄せる「ノースショア」で、6歳から波乗りを始めた。ジュニアからユース年代までは米国代表ではなくハワイ代表として大会に出場。16歳以下の世界大会を3度制した実力派だ。ワールドサーフリーグで好成績を挙げたことが評価されて、日本代表入りした。

 今年2月、ハワイから千葉県一宮町へ移住。一人暮らしをしながら、五輪のサーフィン会場となる同町の釣ケ崎海岸へ通いつつ、神奈川県の湘南にいい波が来ると聞けば出かけていく。

 サーフィンの本場ハワイからわざわざ拠点を移したのは、日本の「波」を攻略するためだ。

 ハワイは海底がサンゴ礁のため、パワフルで大きく、しかも安定した波が来る。力強く波を踏み「スプレー」と呼ばれる水しぶきを作るライディングを得意とする前田らしいサーフィンができる。

 対して、日本の海底は砂。ハワイに比べ波は小さく、不安定。つまり、変化が激しい。前田によると「1日のうち、1時間とか、30分で波が変わってしまう」そうで、波に合わせてリズムをつくるのに苦労する。このギャップを埋めるのにもっとも重要なものは?と尋ねたら、なんと「キアイ」(気合)だという。

「気合っていう言葉が大好き。だってスポーツはメンタルが強くないとダメでしょう?」とまっすぐなまなざしを向けてくる。

 日本と米国、ふたつの国のメンタリティーを持っていることが「自分の強み」だという。自己主張が強く、アグレッシブな米国人と、やさしく謙虚な日本人の精神性。そんな相反する「こころ」が、アスリートとしての成長を支えている。

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