「MRIなどの画像診断装置とAIを組み合わせたシステムを考える会の会員企業と合同で完成させたと言われました。これを集中出版系列のデータバンクと提携している全国7万5千の医療機関に販売することが決まっており、1兆円規模のビジネスになると。私が事業に参画すれば90億円ぐらいの利益を得ることができるので、その意思表示のためにデポジット(預け金)が2億5千万円必要だと言うのです」(同)

 尾尻氏は「政府の仕事なのでリスクは一切なく、預け金はいつでも返金できる」とたたみかけたという。こうして、中村氏は同年9月13日から18年11月6日までの間に7回、計2億2905万円を振り込んだ。このうち2回、計604万円余は「便宜を図ってくれる原田氏ら3人への顧問料」として、尾尻氏から求められた金だという。

 尾尻氏を信じ、多額の金を振り込んでしまった背景には、原田氏の存在もあった。

 初回の振込額は1億円。それから2週間後、国会議員会館内で開かれた「考える会」の勉強会で、中村氏は尾尻氏から当時7期目の衆議院議員だった原田氏を紹介されたという。中村氏が振り返る。

「原田氏は名刺交換する際に、握手をしながら、1億円の振り込みについて『ありがとうございました。今後もよろしくお願いします』とおっしゃったのです。これで完全に、原田氏イコール『考える会』だと信用してしまいました」

(編集部・大平誠)

AERA 2019年8月5日号より抜粋