東京パラリンピックを見た多くの人が、健常者と障害者の間にある本当はいらない壁や遠慮に気づくことができたら、日本が変わるんじゃないかと思うんです。

──来年に向けて、パラアスリートの中でもプロ選手やアスリート雇用が増え、練習場所も増えるなど競技環境はだいぶ整ってきましたが、パラスポーツの課題はどう感じますか。

香取:今の日本代表選手に競技を始めたきっかけを聞いてみると、家の近くにクラブがあったとか、偶然知り合いがやっていたとか、先生が勧めてくれたとか。でもそういう幸運がなければ競技と出合えない。まだまだ日本にはパラ競技ができる場所が少ないから、やりたいと思っても近くになくてあきらめちゃう人もいっぱいいるみたいです。

 障害のあるみなさんが生活するうえでのバリアフリーは進んできたけど、その先の人生をエンジョイする環境がまだ整っていないのではないかと感じています。そこがもっと整うと、競技人口が増えて、日本のパラスポーツのレベル自体ももっと上がるんですけどね。そうそう、パラアイスホッケーの選手は「新たに競技を始める若い選手がいなくて、選手の平均年齢が高すぎてもう勝てない」って困っていました(笑)。

──選手たちはみなさん、2020年には満員の会場でプレーしてみたいと話していますね。香取さんはどんな東京パラリンピックをイメージしていますか。

香取:パラスポーツはルールやクラス分けも複雑だし、観戦の仕方も独特で見方が難しい競技もあります。だから、去年までは、パラリンピックで初めてパラスポーツを観戦するんじゃなくて、事前に一度は会場に足を運んで、何の競技でもいいから見てほしいと言ってきましたが、今はもう2020年は初めてでもいいから、とにかく会場に足を運んでほしいですね(笑)。僕も平昌ではゼロの状態で競技を見て、初めての感覚をいっぱい得ることができたんだから。

 事前に会場で観戦したい方は、情報収集にパラサポのホームページがオススメです。僕もよく見ていますが、各地で開催される大会情報が載っています。

──パラリンピックでは22競技が行われますが、特に活躍を期待している競技は何ですか。

香取:お会いできた選手たちにはみんな期待していますが、特に、体験して一番怖かった車いすラグビーかな。選手たちの「俺たちはやってやりますよ」っていう熱量がすごかった。それと、結構、選手たちがリラックスできているのもいい。昨年、世界選手権で初めて金メダルを取ったことも影響しているのかな。パラリンピックでも金メダルを取るためには、やっぱり応援の力も必要。ぜひ会場で声援を送ってほしいですね。

(構成/編集部・深澤友紀)

AERA 2019年8月5日号