※写真はイメージ(gettyimage)
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 内閣府の調査によると、ひきこもり状態にある人は全国で推計「115万人」にのぼる。「ひきこもり支援」施設に申し込むのは、ほとんどの場合、当事者の親だ。不安や焦りを持ち、藁にもすがる思いでいる。そこを狙い、「支援」をうたうが、本人の同意を得ず実も伴わない。いま、こうした民間業者は「引き出し業者」や「暴力的支援団体」などと呼ばれ、元入居者や保護者から訴えが相次いでいるという。

 自身も10年近くひきこもっていた「ひきこもり新聞」編集長で、「暴力的『ひきこもり支援』施設問題を考える会」(考える会)の共同代表の木村ナオヒロさん(35)は、引き出し業者が部屋から連れ出す行為を「ひきこもり狩り」と厳しく批判する。

「ひきこもりは家庭だけで解決できないので、支援者が自宅に出向いて本人や家族に働きかける『アウトリーチ』という手法はあります。けれど、本人の合意なく強制的に外に連れ出す行為は人権を無視しています」

 ひきこもっている人の多くは自己否定を繰り返し、傷つき、ギリギリのところで生きているという。それが無理やり連れ出されれば、命を絶つ危険性もある。施設に入れられ自殺をしたケースも聞いているという。

 木村さんによれば、ひきこもり狩りに共通するのは、(1)本人の同意がない、(2)法外ともいえる高額な契約、(3)支援体制が整っていない──の3点。入居料は、1カ月で60万円前後、3カ月で300万~500万円と高額な施設が少なくない。法外とはいえない金額であっても、「3カ月でひきこもりは治らない」などとして、長く施設に入れ結果的に高額な請求をするパターンもある。親は、高額なのはそれだけの理由があるからと信じ、7年間で1200万円近く支払ったケースもあったという。

「自立支援をうたいながら、自立プログラムは極めて脆弱(ぜいじゃく)で、『放置型』や、延長による追加支援を目当てにした『自立阻害型』も珍しくありません」

 2月、東京都新宿区にあるひきこもり自立支援施設「あけぼのばし自立研修センター」の元入居者の30代の男性が、施設の運営会社「クリアアンサー」を相手に550万円の損害賠償を求める訴えを起こした。このセンターには、子どもを入居させた親から半年間の費用として支払った685万円の返還を求める訴えもある。弁護団の一人、宇都宮健児弁護士は強く批判する。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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