■現物の金は1グラムから売却できる

 積み立てた金を現金に換えるときは、積立先の会社が提示しているその時々の買い取り価格で売却することになる。つまり私たちが売却するときの価格が「買い取り価格」と呼ばれているわけだ。逆に私たちが購入するときの価格が「小売り価格」。

 買い取り価格は小売り価格より安く設定されており、この価格差のことを「スプレッド」という。また、金を現金で引き出す際は、引き出し手数料と、自分の銀行への振込手数料がかかる。純金積立の場合、1グラムから売却できる点が、金地金と異なる大きな特徴。将来、急にお金が必要になったときは必要な分だけいつでも引き出せるので安心感がある。

「換金するなら、やはり金の価格が買値よりも上昇して高くなっているときに現金化したいものです。近年、金の価格は一定のレンジ内での上げ下げに終始してきました。そうした価格変動の特徴を考慮し、特にレンジの上限あるいは下限付近に投資のチャンスが潜んでいるといったことも、心得ておきたいですね」(田嶋さん)

■地金で出すとバーチャージ+送料

 純金積立をしている以上、一度は現物の金を引き出して触ってみたい、という人も多い。金を引き出す際の形状はバー(金地金)が一般的だ。ネット証券では100グラムまたは1キロ単位だったり、1キロ限定だったり。金の専門業者ではないため、小重量の金の引き出しには対応できていない印象が強い。

「やはり現物の金を引き出すことを考えているなら、金地金の製造を自前で行っている貴金属会社で積み立てたほうがいいでしょう。最低5グラム単位からの引き出しに対応しています」(田嶋さん)

 500グラム、1キロといった、まとまった重量の金地金にかかる引き出しコストは、1回あたりの引き出し手数料が1500~2000円程度と送料だけ。しかし500グラム未満の金地金になると、一般に流通している金を溶解して新たに作り直す必要があるため、「バーチャージ」と呼ばれる高めの手数料がかかってしまう場合もある。

 なお貴金属会社の場合は自社ブランドが刻印された金地金、それ以外の会社は輸入品の金地金での引き出しが一般的だ。

■コインの価格はもともとプレミアム込み

 より手軽に現物の金を引き出す方法には、「メイプルリーフ金貨」「ウィーン金貨ハーモニー」を始めとするコインという選択肢もある。

 コインの場合、販売価格の中に鋳造コストなどのプレミアム料金が上乗せされているため、金地金に比べると割高になる。貴金属会社などでは、10分の1オンス(約3.1グラム)からの引き出しに対応している。

「純金積立をしている以上、実物の金を一度は見てみたい。でもまだそんなに貯まっていない」ということなら、金地金より、装飾品としての価値もあるコインで引き出したほうが楽しめるかも。

(取材・文/新藤良太、伊藤忍)

※アエラ増刊「AERA with MONEY 毎月3000円で純金投資」の記事に加筆・再構成