日本の大学の「とんがったバイオ研究」の代表格といえば、大阪大学の永井健治教授が取り組む「光る植物」だ。

「ホタルやヤコウタケなどが持つ光るたんぱく質は、遺伝子や微生物の分析、医療診断など、今や生命科学研究に欠かせないツールとなっています。私は従来の光るたんぱく質の遺伝子を改良し、10倍以上の明るさで光らせることに成功しました」

 明るく細胞が光ることでどんなメリットがあるのか。

「例えばがんの研究に使われるマウス。以前は麻酔で眠らせて長時間露光しなければがん組織を撮影できなかったが、動き回っている状態でも確認できるようになります」

 それだけではない。

「街路樹に光る遺伝子を導入すれば、街灯の代わりにできる。世界中の電力のうち現在15%が照明に使われています。植物の明かりが代替すれば莫大な電力を削減できます」

 植物の発光のオンオフも、発光たんぱく質にスイッチング機能を付与することで可能になると永井教授。

「火薬成分に反応する光る植物を作り、それを地雷原にまけば安全に地雷が撤去できます。光る植物は人類の未来を明るくしてくれるんです」

(ライター・大越裕)

AERA 2019年7月29日号より抜粋