占いでさえ「あの人とは相性がいい」と言われるとその気になってしまいがち。DNA検査の結果なら、なおさらだ(撮影/写真部・東川哲也)
占いでさえ「あの人とは相性がいい」と言われるとその気になってしまいがち。DNA検査の結果なら、なおさらだ(撮影/写真部・東川哲也)

 子どもの「生まれ持った才能」が分かる──。そんなDNA検査が人気なのは、お隣の中国だ。中国の幼児教育は、「スタートラインで負けるな」が合言葉。音楽や絵画の才能を見つけて「遠回りしない」教育をさせたい父母の注目を集めている。

 中国のDNA検査は、遺伝病の検査やがん治療などの目的で医療機関が行うものだったが、この3年ほどで、医療行為として行わない「消費者向け」検査が流行している。DNA検査の市場規模は今後5年ほど年3割以上の速度で拡大し、2020年には300億元(約5千億円)を突破するとの予測もある。

 ただ、市場の拡大が速すぎて、情報を解読できる専門家が足りないという報道もある。検査結果の質を担保する監督制度もない。とりわけ、子どもの才能については後天的要素も多く、DNA情報だけで判断することには疑問も呈されている。

 中国共産党機関紙人民日報も「天賦の才能はどの遺伝子でどう決まるのか十分な根拠がない」との専門家の意見を紹介。中国国営新華社通信も「検査結果に科学的根拠が乏しければ、誇大広告だ」との厳しい声を紹介している。中国のDNA検査の現状は「新型の占い」にとどまっているとの見方もある。

 それでも、DNA検査を受けようという親たちの熱は冷めそうもない。北京市に住む会社員の王さん(32)は6月、夫と2人の子どもの家族4人の唾液をDNA検査業者に送った。

 王さんの目的は子どもの才能を知ることではなかった。父母はともに高血圧で糖尿病。そのリスクが自分や子どもに遺伝しているか不安だった。そんな時、目に入ったのがネット通販で人気の検査サービスだった。

 報告書は10日ほどたってスマートフォンアプリで見られるようになった。結果、王さんの遺伝リスクは、糖尿病は低いが、高血圧が高かった。5歳の男の子と5カ月の女の子には、幸い病気のリスクは遺伝していなかった。

「子どもに遺伝していなくて安心した。私は今後、高血圧にならないよう気をつけます」

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