急速に広がる遺伝子検査サービスだが、日本初の個人向け大規模遺伝子解析サービスを開始したジーンクエストの代表で生命科学者の高橋祥子さんは、サービス開始時から「なんだか怖い」という声や批判を受けてきたという。

「遺伝子だけで確定的に決まるわけではなく、環境要因も大きく影響します。にもかかわらず、一度偏見で見るとその後の情報をシャットアウトしてしまい、理解が深まらない傾向がある」

 と高橋さんは指摘する。

 検査が信頼できるかどうかの判断は、素人には難しいと感じるかもしれないが、根拠とする研究や論文を提示しているかどうかも一つの目安になる。例えばMYCODEでは、それが日本人集団を含んだ集団のサンプルで行われた研究か、別の研究グループでも同一の結果が確認できているか、サンプル数は十分かといった視点から、論文評価レベルが3段階で表示される。

 テクノロジーの進化に対して議論が後手に回っている状況は否めない。正直なところ、検査を受ける前は私も根拠のない不信感を抱いていた。さらに、仮に適職診断などの企画を編集部全員で試したらどうなっていただろうか、という一抹の恐ろしさも感じる。

“遺伝子的に誰が優れているか”という、決してあってはならない考え方に、つながらないと断言はできるのか。踏みとどまるべきポイントはどこなのか。社会全体で建設的な議論を進めるためにも、まずは個人として正しく状況を理解し、リテラシーを身につけたい。(編集部・高橋有紀)

AERA 2019年7月29日号