一方の女子は、すでに4回転を練習している紀平梨花(17)を追い掛けるように、多くの選手がトリプルアクセルに挑む。

 成功に最も近いのは樋口新葉(18)だ。すでに試合の6分間練習で成功する姿を見せたこともある。今年明治大学に入学し、新しい環境で飛躍を目指す。

「大学は授業が厳しく、スケートの練習時間が減ったぶん、短い時間で集中して頑張ろうと思えるようになりました。去年までは余った時間でトリプルアクセルをやっていましたが、今は『練習の半分は曲かけ、半分はトリプルアクセル』と決めて練習し、感覚が掴めてきました」

 すでにステップアウトで降りる回数は増えている。

「そろそろ(成功しそう)な感じ。今季は試合でも1本入れていきます。跳べないジャンプを試合で入れたことはないので、不安と、試合なら跳べそうというワクワクと、半々です」

 平昌五輪4位の宮原知子(21)は、トリプルアクセルは五輪でメダルを取る重要な武器と捉え、練習を強化させている。

「1日3枠の練習があったら、そのうち2枠の何分かをトリプルアクセルに割くことにしていますが、まだ降りられていません。今季のうちに、練習で1回は立ちたいと思っています」

 坂本花織(19)も、トリプルアクセルの習得に時間を使う。

「回りきって転ぶという感じがずっと続いていて、もう超微妙な気持ちです。もっと高さを出すか、回転ピッチを上げるかしかないので、悩んでいます」

 打開策として参考にしているのは、伊藤みどりだ。

「スピードのなかで、しっかり脚を振り上げて、あり得ない高さまで跳んでいる。みどりさんのトリプルアクセルの動画をリピートして見ています」

 本田真凜(17)は、今季は本田武史コーチにジャンプ指導を依頼した。

「昨季はアメリカでいろいろなジャンプを習っても、日本にいる間に自分の跳び方に戻っていました。今季、まずは3回転ジャンプを完璧に跳んでから、4回転トウループもやりたい」

 昨季の全日本ジュニア女王、横井ゆは菜(19)は、ジュニア時代に試合でトリプルアクセルに挑んできたことで知られる。三原舞依(19)も、春にはトリプルアクセルの練習に挑んだ。夏は体力作りをやり直し、シーズンに間に合わせたいという。

 あらゆる努力を続ける選手たち。シーズンが楽しみだ。(ライター・野口美恵)

AERA 2019年7月29日号より抜粋