姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍
姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍
6月30日、南北軍事境界線にまたがる板門店で対面したトランプ米大統領、金正恩朝鮮労働党委員長、文在寅・韓国大統領(手前右から)=労働新聞ホームページから
6月30日、南北軍事境界線にまたがる板門店で対面したトランプ米大統領、金正恩朝鮮労働党委員長、文在寅・韓国大統領(手前右から)=労働新聞ホームページから

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 日本政府が韓国に対し輸出規制強化をしたことで、日韓関係は戦後最悪の状況に陥りました。問題をこじらせてしまった理由として、文在寅(ムンジェイン)政権が日本国内の空気をほとんど読めなかったことが大きいと思っています。とりわけ徴用工の問題が出てきたときに、韓国政府は静観するのではなく早いうちに何らかの提案をすべきでした。日本国内の報道を見ていても、世論の6割以上が輸出管理強化に賛成しています。韓国にガツンとやってほしいという国内世論を背景に、官邸と経済産業省が主導したのでしょう。

 日本側は、現在の文政権を相手にしないことで文政権が韓国の中で孤立し、野党がより力を持つことで親日的な宥和(ゆうわ)勢力の増強を望んだのか。来年4月の韓国の総選挙に文政権が立ち往生するような結果になって欲しいという狙いがあったのか。それとも、兎にも角にも参議院選挙や日本国内の世論を考えた上での対応だったのか。今回の輸出管理強化の目的がどこにあるのかをもう一度、検証すべきだと思います。

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姜尚中

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姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

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