小竹 まさこさんの書籍は、これまではライフスタイルが中心の印象でしたが、今回は漢方を通して、人間の個の内面のところにも興味を持たれている。これって必然的なものでしたか?

伊藤 5、6年前から中国鍼を始めました。その鍼の先生が薬に頼らずに、こういう時はこうするといいよとあれこれ教えてくださったんですね。そのことがきっかけで、薬を飲むのに今まではそう抵抗もなかったのが、抑えつけるのではなく、まずは日々の心がけこそが大切ということに気づいて。もちろん薬は時によって、なくてはならないものだと思うのですけれど……。そんなとき陳先生とお会いするきっかけがあり、一緒に本を作れたらいいいですねとなったのです。

小竹 私は結婚してなかなか赤ちゃんに恵まれず悩んだ時期がありましたが、病院に行くと治療がとにかくストレスで、すぐ通院をやめてしまいました。そんな時に漢方を薦められたんです。漢方がきっかけかわからないですけど体質も変わって、その後、二人の子どもに恵まれました。無理に薬でからだに負担をかけるよりも、私にとっては自分の生活のリズムなどを変えるというのは大事だったようです。。今回、漢方の考え方が盛り込まれているお料理は紹介されているのでしょうか。

伊藤 たとえば、きゅうりは1年中ありますよね。「きゅうりは夏の野菜ですが、冬は食べちゃいけないんですか」と陳先生に聞いたんです。陳先生は「暖房などで乾燥して水分が取られているから食べたかったら食べていい。その場合は火を通して」というようなアドバイスをいただきました。空調などの設備もあって、室内の温度は昔とは違うからって。他にも女性は、羊肉やきくらげといった色の濃い食材がいいんですよ、とか。でも、からだにいいからってそればかり食べてストレスになるのはいけないんですけれどね。

小竹 本当に。食べたいものをがまんしてストレスをためこむよりも、今の自分自身の心や体にとって嬉しいものはなんだろうと考え、食べるほうがいいですよね。誰かや何かのために作らなきゃ、と料理をするより、自分のために、自分好みの味を作れるほうが、自由になれるし、楽しいですから。

伊藤 陳先生も「病は気から」っておっしゃってましたものね(笑)。

【伊藤まさこさん】
いとう・まさこ/1970年、神奈川県横浜市生まれ。暮らしや料理に関するスタイリストとして女性誌や料理本で活躍。主な著書に『伊藤まさこの 器選び』『美術館へ行こう ときどきおやつ』『おいしい時間をあの人へ』など多数

【小竹貴子さん】
こたけ・たかこ/1972年、石川県金沢市生まれ。Webディレクターとして経験を積んだ後、2004年有限会社コイン(現クックパッド株式会社)に入社。08年執行役に就任。10[1] 年「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011年」を受賞。現在コーポレート・ブランディング部、本部長を務める

※クックパッドニュースには、この本からの素敵なレシピが紹介された記事も! https://news.cookpad.com/articles/33151

(編集部・三島恵美子)

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三島恵美子

三島恵美子

ニュース週刊誌「AERA」編集部で編集や記事執筆、書評欄などを担当。書籍の編集も多数経験。

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