太宰、三島、芥川の3人の作家の作品で一番好きなのは「太宰治の『女生徒』の中に入っている『燈籠(とうろう)』」だという。デビューからの9年間で変わったことは、「開き直ることができたというか、書く上で失敗してもいいやと思えるようになった」と答えた。

 選考会では、「むらさきのスカートの女」と「わたし」は二人の別の人間なのか、実は二人で一人なのかと議論になり、その議論が作品の評価を落とす方向ではなく高める方向に行ったという。こうした選評が伝えられると、「色々な読み方をしていただいたほうが私も嬉しいです。同一人物と想定して書いたわけではないですが、完成したものを読みかえした時に、色々な読み方ができて面白いねというお話を担当さんともしました」と話した。

 執筆の楽しさについて問われた時は、「集中している時が楽しいです。なかなか集中できないですが、集中している一瞬が楽しくて、その楽しさを味わいたくて書いている感じです」と笑顔で答えた。(編集部・小柳暁子)

AERA 2019年7月29日号より抜粋