「もうけの大半を原作を出版した東京の会社が取っていくのでは、現場で汗を流して動画を描いた人に申し訳ないというのが、理由の一つだったようです」
森脇さんは13年に放送が始まった「たまこまーけっと」シリーズで、京アニのスタッフが京都市内の商店街でロケをする際に同行した。「京都の伝統や文化にふれて、それを作品内で深く表現して感動をもたらすんだと実感しました」
低賃金・長時間労働が常態化したアニメ業界では珍しく、福利厚生を充実させた労働環境でも人気を集めた。
「東京にはフリーのアニメーターが大勢いるが、地方には少ない。経営陣は『若い子を預かっている』という自覚のもと、アニメーターを正社員にして生活を保障したのです」
森脇さんは、放火の被害を受けた第1スタジオを訪れたこともある。「育児中のスタッフのために子どもが遊べるスペースがあるなど配慮されており、アットホームな感じでした」
作品が高く評価される一方で、一部の原作ファンからは、キャラクターや物語の流れを大幅に変える演出に反発や非難の声もあった。
「犯人は宇治市の本社ではなく、アニメーターが集まる第1スタジオを狙った。被害にあった方々やそのご家族を思うとやりきれません」
(朝日新聞・伊藤恵里奈、編集部・小田健司)
※AERA 2019年7月29日号より抜粋