「僕を産んだ罪で両親訴える」衝撃の告発で始まる、貧困地帯のリアル描いた物語

中村千晶AERA

Nadine Labaki/1974年、レバノ... (17:00)AERA

Nadine Labaki/1974年、レバノ... (17:00)AERA
 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【写真】映画「存在のない子供たち」の場面写真ともう1本おすすめDVDはこちら

*  *  *
「両親を訴えたい。僕を産んだ罪で」──12歳の少年ゼインの衝撃的な告発で幕を開ける本作。ナディーン・ラバキー監督(45)はレバノン・ベイルートの貧困地帯を3年間取材し、ドキュメンタリーのようなリアルを生み出した。

「貧困地帯の刑務所や収容施設で子どもたちを取材すると彼らは口々に『生まれなければよかった』と言う。彼らが感じているのは怒り。親の愛も、満足な食事も与えられないのに、なぜこの世に生を受けたのか。なぜ虐待されたり、レイプされたりしなければならないのか。その怒りをスクリーンに翻訳したいと思った。そこから両親を訴える、という設定が生まれた」

 主人公ゼインは親が出生届を出さなかったために学校にも行けず、毎日路上で働かされている。唯一の支えだった11歳の妹が無理やり結婚させられたことで、彼の怒りは爆発する。ゼインを含め、キャストは全員がストリートで発掘され、演じる役と似た境遇にあった。

「初めてゼインの目を見たとき『この子だ!』と思った。彼はシリア難民で身分証明書を持たず、路上で働いていた。読み書きもできなかったけれど本当に聡明で、映画の意味もよくわかっていた。だから撮影は彼の現実を我々のフィクションに寄せていく、という作業になった。彼自身のありのままを撮りたかったから、演技はしてほしくなかった」

 ときに機転を利かせてピンチを切り抜け、大人相手でもひるまないゼインの生命力、存在感が映画をスペシャルなものにしている。遊園地で巨大な女性像の服を脱がせるシーンは実にユーモラスだが、

「あれもすべてアドリブ。『あの人形、チャックがあるわよ?』と言ったあと彼が人形のシャツをめくり始めたとき、スタッフ全員が『え? 下にちゃんと胸があるんだ!』って驚いた(笑)。でも結果的に母性を象徴するとても印象的なシーンになった」

続きを読む

TwitterでAERA dot.をフォロー

@dot_asahi_pubさんをフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック