6月に開かれたG20サミットでの日米首脳会談。笑顔で握手し、親密な関係をアピールした/6月28日、大阪市で (c)朝日新聞社
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6月に開かれたG20サミットでの日米首脳会談。笑顔で握手し、親密な関係をアピールした/6月28日、大阪市で (c)朝日新聞社

 韓国に対しては強硬姿勢を貫く。毅然とした態度をアピールすることで参院選の支持が広がる。敵を見つけて叩くことで愛国心をあおるのは、まさにトランプ米大統領の手法だ。

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 日本政府による韓国への半導体材料の輸出規制は、元徴用工訴訟をめぐる韓国への事実上の対抗措置と言われている。

 輸出規制の根拠は次のようなことだ。

 韓国産業通商資源省は7月10日、軍事利用可能な戦略物資の不正輸出を認め、2015年から今年3月にかけて合計156件の摘発があったと発表した。日本政府は、この戦略物資の中に、日本が輸出したフッ化水素が含まれていることを指摘し、その一部が北朝鮮に密輸されたと主張。韓国政府は、日本政府の指摘を全面否定しているが、日本としてはこのために輸出規制に踏み切ったとしている。

 ある日本政府関係者は言う。

「安倍首相にしてみれば、韓国による戦略物資の不正輸出疑惑は渡りに船だった。韓国に対し堂々と輸出規制を発動できる。安倍首相が意識するのは、米中貿易戦争で、2千億ドル(約22兆円)相当の中国からの輸入品に対する関税率を、現行の10%から25%に引き上げ、中国との関係で優位な立場を誇示したトランプ大統領でしょう」

 韓国に対しての強硬姿勢を演出する背景には参議院選挙がある。参院選に立候補する自民党の若手議員はこう証言する。

「韓国に対して毅然とした態度をとるのが当たり前、と演説すると、地方に行けば行くほど拍手が湧くんです。自民党支持者はもとより、特定の支持政党がない有権者に対しても、このメッセージは効果があります。公衆の面前で他国を叩くことは、やや抵抗がありますが、安倍首相が先頭に立って発言をされているので、いわばお墨付きをもらった気持ちです」

 敵を見つけて叩く。これこそ、中国や、中南米から米国を目指す移民をターゲットにして、国民の愛国心を煽り、大統領選挙に勝利したトランプ流の政治手法だ。いまや安倍政治も「トランプ化」している。(編集部・中原一歩)

AERA 2019年7月22日号より抜粋