さて、日本はどうでしょうか。日本の女性医師比率は21.0%(2016年)で、OECD加盟国としては最低ランクです。他にも、研究者に占める女性割合は調査国のなかで最下位(文部科学省調べ)、女性国会議員比率もG20諸国で最下位(nippon.comより)と、実に不名誉な結果が出ています。

 就業の前に、学業の機会に男女差があるのでしょうか。

 アメリカでは、準学士(短大卒)、学士、修士、博士課程の資格保持者の数はすべて女性が上回っています。かつてはすべて男性のほうが多かったのですが、準学士は1977-78年、学士は1981-82年、修士も1980-81年、博士は2006-07年に、男女の数が逆転しています(National Center for Education Statistics調べ)。

 一方日本は、2012年の時点でも大学の学部進学者の数は男性のほうが上回っており(文部科学省調べ)、「女の子が大学なんか行ったらお嫁にいけないよ」といわれていた時代が、まだ続いているかのようです。

 ジェンダーフリーには、反対意見もたくさんあります。男の子はパイロット、女の子はケーキ屋さんに憧れるのが自然だからわざわざその反対を描く必要はないだろうとか、ジェンダーフリーによってパイロットになりたい大多数の男の子を無視することになってしまうのではないかとか、新たなステレオタイプを招いてしまうのでは、といった意見です。アメリカでは、タイトル・ナイン制定以来、並行してバックラッシュがあります。

 いち母親として、確かに男の子は飛行機や車、スポーツに興味を示し、女の子は花や食べ物、おままごとに興味を示す傾向があるとは思います。我が家の3歳の娘もなるべくジェンダーフリーに育てているつもりですが、いつの間にかピンク色とプリンセスごっこ好きに育ちましたし、友人や親せきの子どもたちを見ていてもつくづくそう感じます。

 実際、第一生命保険株式会社が発表している「大人になったらなりたいもの」ランキングでは、男の子の第1位はスポーツ選手か学者、女の子の第1位は食べ物屋さんで、その傾向はここ20年間変わっていないそうです。じゃあアメリカではどうなんだろう……と調べたところ、検索結果に、日米の違いがはっきり現れました。アメリカでは人材会社が複数「子どもの夢の職業」を発表しているんですが、その結果が、そもそも男女で分かれていないんです。

 なんというか、やっぱり日本はもうちょっとジェンダーフリーを意識してもいいんじゃないか、と実感した瞬間でした。

AERAオンライン限定記事

◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

著者プロフィールを見る
大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

大井美紗子の記事一覧はこちら