看板メニューの「ポルケッタ」は蜂蜜とハーブに漬け込んだローストポークで、柔らかくジューシーな味わいだ。サラダのドレッシングは黒にんじんをすりおろし、紅色の華やかさを加えている。シェフの谷口光将さん(54)は言う。

料理するうえで、色彩は大事にしています。季節によって色のトーンを変えます」

 谷口さんがフードトラックに興味を持つようになったのは8年前、東日本大震災のときだった。被災地へ炊き出しに行き、現地でフードトラックを利用する機会があった。

「待つのではなく、食べたい人の所に自分から行けるんだ、と目から鱗(うろこ)が落ちる思いでした」(谷口さん)

 座席数が14の小さな店。ランチ営業に課題もあった。1千円から1500円のランチを提供してもマックスで2回転。売り上げは2万~3万円と効率が悪く、昼と夜とでは客が分かれるためディナーへの誘導効果も薄かった。

 17年、フードトラックでランチを開始すると、60食程度が採算ラインの目安とされるなか、早くに100~200食に到達。固定店舗時の4倍の売り上げに達した。谷口さんは言う。

「フードトラックを始めようとしたとき『ストリートフードでしょう』とか『店のブランドイメージが下がるのでは』と心配する人もいましたが、オフィス街なので客層は同じ。ランチを食べた人が銀座にディナーを食べに来てくれたりもします」(編集部・石田かおる)

AERA 2019年7月15日号より抜粋