三つ目は、和物へのまなざしだ。とくに近年、その傾向が強くなっていたように思う。「滝沢演舞城」「滝沢歌舞伎」などでは当然かもしれないが、そのほかの舞台でも「和」を意識したシーンが登場した。演出の根幹は主に欧米風なのだが、日本刀や太鼓といった使用する小道具・楽器、武士の無常の世界を描く物語は紛れもなく和物で、これが和洋融合の感触をもたらす。

 四つ目として、「平和の尊さ」をメッセージに入れる脚本もジャニーさんの特徴だろう。16~17年の「JOHNNYS’ ALL STARS IsLAND」では「人の歴史を学ぶということはこの国の悲しみを学ぶということだ」という格言めいたセリフと共に、戦争や災害の映像が流れた。

 アイドルがゴージャスに輝くショーとは対照的な、悲しみの歴史の提示。物語や暗示で平和への願いを表現する演劇はもちろん国内にもある。しかし、戦争や平和への思いが愚直なほどに純粋に、真摯に語られるセリフは、プロの舞台ではめったにお目にかかれないだろう。客席を埋め尽くす若い女性とその母親の胸を射抜く。涙を拭う人の姿もあった。

 かつてジャニーさんは「ショーで日本にもかつて戦争があったことを知ってもらえれば。昔を生きているからこそ平和の尊さが分かる」と語っていた。

 そして、出演者のプライベートな親子関係をそのまま吐露させることもあった。前出の「JOHNNYS’ ALL STARS IsLAND」では「Sexy Zone」の佐藤勝利が実の父の死を告白、同じ舞台で、現在は「King&Prince」の平野紫耀が、母の病気に苦悩する心情をはき出した。

「作ったストーリーに僕はあまり感動しない。真実の重みが、お客さまにもきっと勇気を与えると思うんですよ」とはジャニーさんの言。実に生々しく、シビアでもある。

 ジャニーさんの舞台は、常に歌、踊り、演技、アクロバットなどの繚乱する華麗でエネルギッシュなショーとして立ち現れた。不安な者を勇気づけ、希望に燃える者を激励し、自らの姿勢を通じて、夢を抱くことの大切さ、追い続けることで訪れる何ものにも代えがたい至上の喜びを伝えたかったのではないだろうか。そこに少年の心のままの不朽の品性が光った。

 自らの抱く夢の実現に心血を注いだ“不屈の夢追い人”だったのだ。

(朝日新聞社・米原範彦)

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