目まぐるしく面が入れ替わる中国由来の「変面」はもはやマジックに近く、「滝沢歌舞伎」などでは定番となった。

 体幹トレーニングなどでも注目される「エアリアルティシュー」も取り入れた。白い布を天上からつるし、舞台上空約10メートルの高さで展開されるパフォーマンス。命がけと言ってもいい場面だ。「嵐」の相葉雅紀も、コンサートで挑戦したことがある。タレントたちの真剣そのものの面ざしは、客席の緊張感を誘う。

「SHOCK」シリーズでは、光一が何十段もの階段落ちを見せるのが伝統となっている。いずれもおおむね、観客の目を左右上下にスピーディーに移動させ、妖精のようなタレントが危険に身をさらすハラハラ感をかき立てる効果をもたらす。

 二つ目は、「ウエストサイド物語」に代表されるアメリカのショービジネスへの憧れ、オマージュだ。たとえば「SHOCK」シリーズでは、ジャジーな音楽が流れ、タキシード風の衣装の出演者たちが、街灯の下、少し物憂く、物悲しいアメリカの都会の夜の静寂を表現するシーンがよく出てくる。ストーリーもニューヨークのブロードウェーでの活躍を夢見る青年たちの姿を描いている。

 こうしたシーンを見るたびに、私には、アメリカ西海岸で生まれたジャニー少年が、都会の夜、自分の影を見つめながら、ポケットに手を突っ込むなどして独り歩く、その後ろ姿と、不安と希望がないまぜになった少年の瞳の輝きが、目に浮かんでくるのだ。

 前述の「ジャニーズ伝説」では、「A.B.C-Z」が初代「ジャニーズ」の歩みを演じている。渡米した66年、初代ジャニーズに提供された未発表曲「ネバー・マイ・ラブ」がテーマ曲だ。初代は諸事情で全米デビューを果たせなかったが、67年に米バンド、アソシエイションがカバーし、ビルボードチャートで2位の大ヒットとなった。舞台では、あおい輝彦が歌う「ネバー・マイ・ラブ」も流れる。運命の巡り合わせで叶わなかったとの思いは、ジャニーさんの記憶の奥でうずいていたのだろう。

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「人の歴史を学ぶということは…」