航空便の遅れはさらに続いた。29日に向かったポーランドの古都クラクフへの便は、30分ほど到着が遅れた。

 当日は、市長との昼食会、バベル城の視察などをこなし、ワルシャワに日帰りする過密なスケジュール。宮内庁によると、ご夫妻は20分の休憩を5分程度に短くしたほか、市長との昼食会が少し短くなったため、午後には当初通りの時刻で予定をこなしたという。ただし、午前中に訪問予定だった施設では、待たされる人もいた。

 一方、秋篠宮ご夫妻は上皇ご夫妻の足跡を丁寧に継承している。今回のポーランド・フィンランド訪問で訪れた両国の都市や施設には、かつて上皇ご夫妻が訪れた場所が含まれる。

 たとえば、ポーランドでは、日本学科のあるワルシャワ大学、クラクフのヤギェロン大学、日本美術技術博物館「マンガ」などがそうだ。出迎えた人たちから、上皇ご夫妻がかつて訪問した際の話題がたびたび出た。日本美術技術博物館では、2002年に訪れた上皇ご夫妻の記帳レプリカが壁に掲げられていた。館の設立を提唱したポーランド映画の巨匠、故アンジェイ・ワイダ監督の妻クリスティーナさん(89)は当時、上皇ご夫妻の案内役を務めた。クリスティーナさんは、秋篠宮ご夫妻に「お目にかかれてとてもうれしいです」と伝えたという。

 紀子さまがお一人で訪れたワルシャワの青少年マルチメディア図書館は、世界中の子どもに読書の喜びを運ぶ国際児童図書評議会(IBBY)の行事などを開催する場所だ。美智子さまがIBBYの世界大会で講演するなどゆかりのある組織で、紀子さまは、活動を継承するように、子どもたちと触れ合った。

 秋篠宮さまは渡航前の会見で、新時代に皇室が担う国際親善の意義や役割についてこう語った。

「私たちが訪れて、その国の文化とか社会、そして歴史を知るということもありましょう。また、行った国の人たちに日本の文化であったり、歴史であったり、そういうことを知ってもらう機会にもなるかと思います。また、私たちが行くことによって、その国のことが、もし日本で報道されたりした場合に、日本の人たちもそこの地、国、地域のことを知る機会ができるかもしれません」

 ポーランドを知る人からは、違う場所も見てほしかったと声があがった。ポーランドに数年前から住んでいるという女性(41)は「難しかったのかもしれないが、アウシュビッツ強制収容所を訪れてほしかった。他にも、田舎を見てもらえれば、ポーランドの多面性がより見えたのでは」と話した。

 ご夫妻の歩みは始まったばかりだ。皇嗣としての海外訪問では、秋篠宮さまの独自性も期待されるが、公的な目的でのバランス感覚も重要になってくるだろう。市民と積極的に交流する二人の模索は続く。(朝日新聞記者・長谷文)

AERA 2019年7月15日号より抜粋