小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
#MeToo運動などもあり、セクハラに対する世の中の意識は大きく変わってきた (c)朝日新聞社
#MeToo運動などもあり、セクハラに対する世の中の意識は大きく変わってきた (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「カフカと知恵の輪」という男女のお笑いコンビを組む小保内太紀さんと知恵の輪かごめさん。他の芸人からのかごめさんへのエロいじりに怒った小保内さんのツイートが話題になりました。世間がハラスメントに対しての認識を改めつつある今、全く後れをとっているのがエンタメ界。テレビ画面でもこういう感覚が普通になればいいのに。

 エロいじりはみんなが笑える鉄板ネタだと思っている人は少なくないでしょう。私もかつては、下ネタを上手に言うのが才能だと勘違いしていました。でも今はそうは思いません。

 職場や学校、家庭内でのコミュニケーションは知らず知らずのうちにメディアの影響を受けます。人が集まればいつの間にかバラエティー番組のひな壇トークのように。芸人はコミュニケーションの達人とされ、いじりに対して場を盛り上げるリアクションをするタレントは評価される。だったら自分も、と模倣するのも無理はありません。

 でもここ2年で多くの人の認識が変わりました。#MeTooや財務事務次官のセクハラ問題を受け、様々なハラスメントが「よくあること」から「あってはならないこと」になったのです。このほどパワハラ防止法も成立しました。

 世間から大きく取り残されていたエンタメ界も最近は少しずつ変わってきました。収録現場でもセクハラに以前よりも配慮が見られるようになってきましたし、敏感なタレントは「今時これはないな」とわかっています。それでもまだ一部では「エロいじりは受ける」の思い込みは強く、演出や司会のトークにうんざりすることも。心強いのは、それに異議を唱えると同意してくれる人がスタジオの中にも画面の向こうにも増えたこと。習慣を変えるのには時間がかかるけど、変化は確実に起きています。この流れは今後ますます強まるでしょう。

AERA 2019年7月8日号

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小島慶子

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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