「さらに近年、内臓脂肪の蓄積によりがんの発症リスクが高まることが、国際がん研究機関の研究で明らかとなりました。性ホルモンの乱れや、過剰なインスリン分泌により引き起こされる炎症などが、がんリスクの上昇に関係すると考えられています」(池谷医師)

 認知症も内臓脂肪との関連が指摘されている。中年期に肥満だった人は、高齢期以降にアルツハイマー型認知症を発症するリスクが3倍高くなることが指摘されている。

 これらに加え(7)肩こり・腰痛(8)加齢臭(9)さらなる食欲なども引き起こすという。

「おなかが出るとバランスをとるために無理な姿勢になり、肩こりや腰痛の原因になります。また、加齢臭の原因となる『ノネナール』という物質は、内臓脂肪が増えると増加することがわかっています。内臓脂肪によって脳の満腹中枢に働きかける『レプチン』に対する感受性が低下し、さらに食欲が引き起こされる。悪循環です」(同)

 増え続けた脂肪は、本来たまる内臓周囲から溢れ、肝臓や心臓、筋肉などにも侵食していく。異所性脂肪、別名「エイリアン脂肪」とも呼ばれ、内臓脂肪以上に危険な存在だ。

「肝臓につくと肝硬変から肝臓がんになるリスクが高まり、心臓につくと動脈硬化が急速に進むと言われています。通常、動脈硬化は血管の内側から進んでいくが、血管の外側から動脈硬化を進めてしまうのです」(同)

 内臓脂肪がたまる主な原因は、食べ過ぎ、飲み過ぎと運動不足だがメカニズムは不明で、日本人は欧米人と比べ、インスリンの分泌力が弱く、皮下に脂肪を十分に貯蔵できず、内臓脂肪をためやすいとも言われている。(編集部・深澤友紀、小長光哲郎)

AERA 2019年7月8日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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