日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2016」の作成委員会委員長で、結核予防会総合健診推進センター所長の宮崎滋医師はこう説明する。

「脂肪はたまる場所によって皮下脂肪と内臓脂肪に分かれます」

 皮下脂肪はその名の通り皮膚のすぐ下にあり、外部から体を守るクッションのような役割を果たす。太ももやお尻にたまりやすく、いわゆる「下半身太り」「洋ナシ型肥満」の人に多い。

 一方、内臓脂肪は皮下脂肪や腹筋のさらに奥、消化管の周辺にある腸間膜や大網のまわりにたまる。「おなかポッコリ体形」「リンゴ型肥満」の人に多い脂肪だ。

 多すぎるとスタイルを損なうのは同じだが、内臓脂肪は皮下脂肪に比べ、病気につながりやすいことが指摘されている。

「脂肪細胞は単に体についているだけでなく、体内機能調整のため、アディポサイトカインというさまざまな生理活性物質をつくりだし、体に分泌しています。これらは、内臓脂肪の量が適正な場合は『善玉』として作用しますが、内臓脂肪過多になると『悪玉』となり、糖尿病や脂質異常症などさまざまな病気を引き起こすのです」(宮崎医師)

 主なものだけでも、(1)糖尿病(2)高血圧(3)脂質異常症(4)動脈硬化(5)がん(6)認知症があげられる。順番に説明していこう。

 冒頭の男性が指摘された糖尿病の場合、内臓脂肪から出される悪玉のアディポサイトカインの作用で、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起き、血糖値をうまく下げられなくなった可能性がある。急性膵炎も、内臓脂肪による脂質異常症が引き起こすことがある。

 同様に高血圧も、内臓脂肪によるインスリンの過剰分泌などによって引き起こされる。

 動脈硬化は日本人の死因の上位を占める脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすが、これも内臓脂肪と密接に関係している。

 池谷医院院長の池谷敏郎医師によると、内臓脂肪がたまると「やせホルモン」「長寿ホルモン」と呼ばれるアディポネクチンが減り、血栓ができやすくなるPAI‐1と呼ばれる物質が増える。いずれも前述のアディポサイトカインの一種だ。

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