リリー:じっとしていられないんでしょ。何かを表現していないといられない体質なんだよ。オレも絵を描くけど慎吾ちゃんみたいに徹底的にやるタイプじゃない。画家の大竹伸朗さんや慎吾ちゃんみたいに、いい意味の「異常」を感じさせてくれる人は本物だなって思う。

香取:うれしい褒め言葉です。僕も大竹さんの作品が大好きで、自分もコラージュが好き。そのための雑誌が1部屋分ある。

リリー:スクラップ部屋ね。俺の「二大スクラッパー」は、先輩のみうらじゅんさんと大竹さん。二人の初対面の時、二人とももじもじしながら「のり、何使ってるんですか?」からなの(笑)。

香取:(爆笑)。僕、最近依頼されて絵を描くことが増えてきたんですが、なかなか難しいんです。自由に描く絵と違って制限もあるし。

リリー:でも依頼されるって「宿題」だよね。宿題だから描ける絵っていうのもある。

香取:そう! 個展でお客さんが「いい」と言ってくれるのがけっこう「宿題」の絵なんですよ。だから複雑なんです。一生懸命に宿題にこたえたその熱量がいいのかな。でも自由な思いで描いたものを褒めてもらいたい!という思いもあって。

リリー:音楽の世界でも、そのバンドや歌手の一番のヒット曲って意外と「CMソングや映画の主題歌」というお題があって作られたものだったりする。どこかで献身しているほうが、風通しがよかったり、気持ちが素直にこもったりするのかもね。

香取:なるほど。わかる気がする。参考になりました。

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2019年7月1日号