「必要なのは、不審者情報ではなく、切迫した事態で早期対応を促すメール。『緊急通報メール』になって初めて、メールが意味を持つことになります」(小宮教授)

 ただ、先の佐藤さんは、不審者情報メールは、危険を自ら察知する能力を持つ、言い換えれば「正しく怖がる」ためには有効だと話す。

「見える不審者と見えない不審者はどちらが怖いかと言えば、見えない方が怖い。日常に潜む不審者の姿がメールによって可視化されれば心構えができる」

 例えば、「金属バットを持った不審者が出た」というメールを受け取った時、この情報は警戒すべきものなのか、しなくていい情報なのか、それを考えることが大切だと話す。

「考える習慣を身につけておくことで、万が一、似た状況に遭遇した時に、迅速に対処することができます」(佐藤さん)

 子どもたちの安全を守るのに、決め手があるわけではない。保護者、学校、地域が連携して対策をとらなければいけない。(編集部・野村昌二)

AERA 2019年7月1日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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