と、安倍首相がイランに妥協することを牽制したことを明らかにした。タンカーを攻撃した犯人は分かっていないが、イランと米国の緊張緩和を望まない勢力の仕業との推測はつく。米・イランの関係改善を警戒する強硬な勢力を挙げていけば、(1)イラン国内の革命防衛隊など強硬派(2)イランが支援するレバノンのシーア派組織のヒズボラ、イエメンのフーシ派などの民兵組織(3)イランと対立するサウジやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸のスンニ派諸国(4)アルカイダやイスラム国(IS)などスンニ派過激派組織(5)イスラエル──と、きりがない。

 このタンカー攻撃は、対立が渦巻く中東情勢が垣間見えただけとも言える。ジャングル化する中東で、安倍首相がトランプ大統領のメッセージを携えてイランに入り、外交の無力さをさらけ出した。そもそもイラン訪問で、安倍首相はトランプ大統領との個人的な信頼関係を重要なカードとした。しかし、ハメネイ師はにべもなく拒絶。いまの中東で、米国との友好関係によって、日本は自国の安全を守ることができるのだろうか。(中東ジャーナリスト・川上泰徳)

AERA 2019年7月1日号より抜粋