アメリカのデューク大学では数年前からきょうだい間の臍帯血投与も始まっていて、日本でも脳性まひの子の弟や妹を出産する際に「いつか上の子の治療に役立てることができたら」と保管する親たちが増えている。だが、デューク大学には世界から申し込みが殺到し、順番が回ってこないうえ、海外での治療となると経済的な負担も大きく、国内での治療実現を願う家族は多い。

「主治医からは、脳性まひには治療方法はなく、息子の状態が良くなることはないと言われました。でも、日本でも研究が進んできている。少しでも可能性があるなら、あきらめたくないんですよ」

 6月15日に都内で開かれた講演会で、主催した「さい帯血による再生医療推進全国ネット」の代表の後藤道雄さん(68)が声を搾り出した。

 後藤さんは沖縄県北中城村在住。息子の万然(ばんねん)くん(7)は生後6カ月のときに風邪ウイルスに感染し脳症になった。一命はとりとめたが、手足にまひが残り、歩くことはできず、目も見えない。

 日々リハビリを続ける中で、脳性まひの子どもに対する臍帯血治療の研究が進んでいることを知った。

「臍帯血のことをもっと早く知っていたら、万然の後に生まれた2人のきょうだいの出産のときにも残しておけたのに、と後悔しました」

 その後、妻典子さん(45)が妊娠。昨年11月に出産した際に臍帯血を保管した。

臍帯血は出産のときにしか採ることができない。もっと多くの人に臍帯血のことを知ってほしいとの思いから、昨年8月、地元で勉強会を開催し、任意団体を立ち上げた。典子さんは言う。

「いつか万然が自分の意思をうまく表現できるようになったらと願っています。臍帯血は量も限られているので、効果のある治療のためにも、万然が成長して体格が大きくなる前に、一日でも早く投与したいんです」

 都内に住む吉田友里さん(38)は8歳の第1子が脳性まひで、第3子の出産時に臍帯血を保管。後藤さんの活動を知って、「全国ネット」に参加し、東京での講演会を企画した。

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国内でのきょうだい間の投与ができるように