脳性まひの子どもたちにきょうだいの臍帯血投与実現を目指して活動する後藤道雄さんと吉田友里さん。「さい帯血による再生医療推進全国ネット」では手書きの署名に加え、ウェブ署名も集めている。団体名で検索するか、アドレス https://form.run/@UCBnet へ(写真/深澤友紀)
脳性まひの子どもたちにきょうだいの臍帯血投与実現を目指して活動する後藤道雄さんと吉田友里さん。「さい帯血による再生医療推進全国ネット」では手書きの署名に加え、ウェブ署名も集めている。団体名で検索するか、アドレス https://form.run/@UCBnet へ(写真/深澤友紀)

 脳性まひの治療をあきらめない――。自己臍帯血を使った脳性まひ治療の研究が進むが、本人の臍帯血を残しているケースはめったにない。脳性まひの子の弟や妹の臍帯血を使った治療の実現を願う親たちがいる。

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 根本治療がないといわれる脳性まひの分野で、出産時にへその緒から採取した本人の臍帯血(さいたいけつ)を使って脳機能を回復させる研究が進む。そんな中、きょうだいの臍帯血を使った治療の実現を目指して、脳性まひ児の親らが任意団体をつくり、各地で講演会やパネル展示、署名活動を行っている。団体では「国内ではまだ認められていないきょうだい間の臍帯血投与が実現できれば、治療を受けられる人が格段に増える。ぜひ早く実現してほしい」と署名への協力を呼びかけており、6月25日までに約8千筆もの署名が集まった。今後も署名活動を続け、7月下旬には厚生労働省に要請書とともに提出する。

「臍帯血による再生医療研究会」代表で、高知大学先端医療学推進センターの相良祐輔・名誉センター長によると、臍帯血とは、母親と胎児を結ぶへその緒と胎盤の中に含まれる血液のこと。臍帯血には体のさまざまな細胞のもとになる幹細胞が含まれており、組織再生の能力があると考えられている。

 高知大学では2017年4月から根本治療のない脳性まひ児に本人の臍帯血を投与する臨床研究に取り組んでいる。

「臨床研究では、脳性まひ児が自立歩行できるようになるなどの運動機能の改善や、知的反応の改善も見られています。臍帯血に含まれる幹細胞がどう変化を起こして効果を発揮させているのかわかってきたところです」(相良氏)

 臍帯血の保管先には、白血病などの病気で移植を必要とする人のために無償提供された臍帯血を保管する公的バンクと、生まれた子の将来の病気に備え、20万円~30万円かけて保管する私的バンクがあるが、現在研究が進む治療は本人の臍帯血が私的バンクで保管されていることが条件。国内で出産時に臍帯血を保管する人は1%にも満たず、治療を受けられる患者が限定される。

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「臍帯血のことをもっと早く知っていたら…」