「自分って?」という問いに子どもたちから様々な答えが(写真/筆者提供)
「自分って?」という問いに子どもたちから様々な答えが(写真/筆者提供)
ヨシタケシンスケさんの『ぼくのニセモノをつくるには』を読み聞かせる(写真/筆者提供)
ヨシタケシンスケさんの『ぼくのニセモノをつくるには』を読み聞かせる(写真/筆者提供)

「『自分』がテーマってどういうこと?」

 新たに始まるプロジェクトの概要を伝えると、たくらみ低学年クラス(小学1・2年生)の生徒たちは素朴な疑問を口にしました。

 プロジェクトのミッションは「『自分』についてとことん知ろう!」。前回彼らが取り組んだ商店街探検に比べると、何とも抽象的でつかみどころがないテーマのようです。

「じゃあ早速やけど、『自分』という言葉を聞いて思いついたことを教えてくれへん?」

 子どもたちはもやもやしながらも、私の問いかけにぐるぐる思考をめぐらせます。いつもの通り、探究堂のプロジェクト学習はテーマに関する既有知識を確認するところからスタートです。

 まずは一人ずつ順番に意見を言ってもらうことにしました。

「鏡がないと自分のことは見られない、かな」

「自分には名前がある!」

「自分の良いところは人に聞かないとわからない。だって、自分では見つけられへんもん」

「けど、自分が得意なことはわかるんとちゃう?」

「私、絵を描くの大好き!」

「人によって性格が違うと思うわ。僕はどっちかって言うと、おとなしくて、部屋で本を読むのが好きやし」

 他の子の意見にも刺激を受けながら、自分の頭に思い浮かんだイメージを次々に言葉にしていきます。

 私はそれらを漏らさないよう模造紙に書き留めていきます。

「……宿題をやるのが面倒くさいねんなあ」

 1巡目の最後となった1年生のR君が、少しの沈黙のあとにポツリとつぶやきました。この意見には、「そうそう!」という共感の声があがります。

 ぼやきとも取れる素直な発言に授業を見学していた大人たちからは笑いがこぼれます。

 彼らの真意に迫ろうとさらに突っ込んだ質問をしてみると、ある子から「算数は簡単やしいいねんけど、漢字は複雑やから嫌やねん」という回答が返ってきました。やはり、取り組む対象によって、その感じ方は変わるとのこと。

「面倒くさいと思う気持ちはどこから来るんやろね?」

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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「脳みそが命令を出してると思うねん」