岩手県久慈市の約9千万年前の地層で、高校生が恐竜の歯の化石を見つけた!その化石は、ティラノサウルス類の歯であることが、このほど発表された。化石はどのようにして見つかり、この発見から何がわかるのだろうか。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」7月号の人気連載「サイエンスジュニアエラ」から紹介する。

自分が発見した歯の化石を持つ関口裕基さん(撮影/上浪春海)
自分が発見した歯の化石を持つ関口裕基さん(撮影/上浪春海)

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 ティラノサウルスは、恐竜のスーパースターだ。全長は11~13m、体重は5、6トン。映画などでその凶暴な姿が描き出されるこの巨大肉食恐竜は、詳しくいうと「ティラノサウルス・レックス(以下T・レックス)」という種。最大級の肉食恐竜として中生代白亜紀(約1億4500万年前~6600万年前)最後の300万年間、北アメリカ大陸に生息していた。

「ティラノサウルス類」というときには、体の特徴がT・レックスに似たさまざまな種類の恐竜がふくまれる。全長も小さいものは3m以下で、白亜紀前期から北アメリカだけでなく、アジアやヨーロッパにもいた。それらしき化石は、日本でもこれまでに8点見つかっている。そのうち確実にティラノサウルス類と認められるものは三つだったが、2018年に岩手県久慈市で見つかった歯の化石が、今年4月、四つ目と認められた。

 この化石を発見したのは、岩手県立宮古高校通信制4年の門口裕基さん(18歳)。昨年6月、高校の遠足で久慈琥珀博物館が運営する琥珀採掘体験場に来ていたときに見つけた。

「先の尖ったアイスピックで掘っているときに、琥珀とは違うものがあったんです。体験場の人に聞くと、歯の化石らしいと言われました」

 この化石はその後、早稲田大学の平山廉教授らの鑑定によって、約9千万年前のティラノサウルス類の上あご前方の歯であることが明らかになった。この歯の長さは9ミリメートル。そこから推定される恐竜の全長は3m前後だという。

 この化石が見つかったのは「久慈層群玉川層」という地層で、ここからは大型植物食恐竜や小型肉食恐竜の歯のほか、カメやワニの骨など約1800点の化石が見つかっている。9千万年前というとまだ日本海はなく、現在の日本列島をつくっている大地はユーラシア大陸の東の端にあった。平山教授によると、当時このあたりは今の熱帯のジャングルのような環境で、海からも近かったという。見つかったティラノサウルス類は、成体(大人)か幼体(子ども)かわかっていないが、このような環境の中でほかの恐竜や小動物などを襲って食べていたのだろう。

 今回見つかった歯について、平山教授はこう指摘している。

「一般的なティラノサウルス類の歯は、縁にギザギザがありますが、この歯にはその特徴がありません。さらに骨の化石などが見つからないと確かなことは言えませんが、新種の可能性もあり、ティラノサウルス類の進化を考えるうえで重要な化石です」

 日本で初めて恐竜の化石が見つかったのは1978年。その後、各地で次々に見つかるようになり、今や化石発見のニュースは珍しくない。門口さんのように恐竜の研究者ではない人が化石を見つけるケースも多い。次に重要な発見をするのはキミたちかも!?(サイエンスライター・上浪春海)

※月刊ジュニアエラ 2019年7月号より

ジュニアエラ 2019年 07 月号 [雑誌]

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AERA編集部
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