AERA 2019年7月1日号の表紙に登場した志尊淳さん
<br />
AERA 2019年7月1日号の表紙に登場した志尊淳さん

 ドラマや映画、バラエティーまで活動の幅を広げる俳優、志尊淳さんがAERAに登場。「俳優業」にかける想いを語った。

*  *  *

 待機作を含めると、昨年から連続ドラマ7本、映画5本、洋画の吹き替えやバラエティーなどにひっぱりだこだ。トランスジェンダーから不良のリーダーまでと役柄も幅広い。

 しばらく前、中村七之助(36)と会ったときのこと。七之助にこう言われた。

「大ファンです。君は天才だ、嫉妬した」

 歌舞伎界の若き名女形をうならせたのは、ドラマ「女子的生活」(2018年)で演じたみき役。女子的な生活を送るトランスジェンダーの「OL」で、恋愛対象は女性という複雑な役どころを演じきった。

「どの役も、一人の人間として向き合っています。たまたま性的対象や、外から見る性認識が自分の性認識と違っただけで、それは人それぞれですから。そしてそれは、当たりまえのことなんです。知らないで偏見を持つのではなく、寄り添うことが大切だと思いました」

 俳優としての転換点は、17年の主演舞台「春のめざめ」。思春期の生と性のめざめを描いた同作に、ひたむきに取り組んだ。何に向かって突き進んでいたのかわからないほど役と共存したあの時間があったからこそ、「今がある」。俳優として開放できる、内面のキャパシティーが広がったという。

 言葉遣いは明瞭で、迷いがない。

「この世界にいる以上、自分の言葉の一言一句に責任を持ちたい。マイノリティーを演じるなかで、ぼくら全員にそれぞれ人権があるように、それぞれに自由があって、尊重していかないと、と考えるようになりました。意識して言葉を選ぶようになって、視野も広がったと思います」

 仕事は常に「できるかできないか」ではなく、「やるしかない」状況。後ろは振り向けないと考えている。

「いろいろな人との出会いで世界が広がっていって、どこにたどりつくのかわからないのが楽しいんです」(文中敬称略)

(ライター・早川あゆみ)

AERA 2019年7月1日号