心配な時は、公証役場で公正証書遺言を作成してもらうこともできる。作成と費用に手間がかかり、遺言書の存在と内容を公証人と証人に知られてしまうが、法的な不備はなく安心だ。もっとも公証人は守秘義務を負っているため、外部に情報が漏れることはない。

「いま年間で約11万件の公正証書遺言が作られています。自筆証書遺言は手軽でお金がかからないというメリットがありますが、法的要件を満たしていなかったらただのお手紙になってしまいます。公正証書遺言は公証人がしっかり専門知識をもってお手伝いしてくださる。方式の間違いは起こりえないので、安全安心です」

 公証人は、前職が裁判官か検察官の人がほとんどだ。

 遺言書を作成した以上、定期的な見直しをすることが重要だ。ずいぶん以前に書き、現状と状況が変わってしまってもう自分の意にそぐわない内容になっていたとしても、法的要件を満たしていればそのまま執行されることになる。

 また前述のとおり、20年7月から自筆証書遺言を法務局に保管してもらえることになった。

「紛失といったトラブルがなくなります。自筆証書遺言の場合は被相続人が亡くなったら相続人が家庭裁判所に検認の申し立てをします。検認とは、相続人に遺言書の存在、内容を知らせ、遺言書の内容を明確にするという手続きなのですが、この保管制度を使うと検認がいらない。検認には時間がかかるので、遺言がすぐに執行できるというメリットもあります」

(編集部・小柳暁子)

※AERA 2019年7月1日号より抜粋