これまで自筆証書遺言を作成する際は遺言者本人が全文自書することとされていたが、財産目録についてはパソコン等で作成したものや銀行通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などに遺言者本人が署名押印したものも認められるようになった。また、これまで自宅保管が多かった自筆証書遺言については、偽造や改ざん、紛失や発見されないといった問題点が指摘されてきたが、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が20年7月10日から施行されることになった。

 前出の田上弁護士に、遺言書の書き方を教わった。

「自筆証書遺言の場合、用意するものは紙とペンと印鑑だけでいいです。遺言書の成立の要件は、『遺言書の全文』『氏名』『日付』『押印』。これで完成です」。

 今回の法改正でパソコン等で作成してもよくなった財産目録はどうすればいいのか。

「書き方にもよりますが、財産目録をつけることは必須ではありません。極端な話、『すべての財産は妻・亜江良花子に相続させる』という一文があればいいんです」

 ただ、実際遺言を執行するときに、どの財産がどこにあるのかがわからないと困る。

「遺言書を見れば分かるようにしておくことももちろん大切ですが、財産がどこにあるかということはお元気なうちにしっかり伝えておく。残された方が手続きしやすくすることが大事です」

 財産目録を作る際の注意点としては、財産の書き間違い、書きもらしをしないこと。書くならコンプリートしないと大変なことになる。

「財産目録に書きもらしがあった場合、そこは遺言の対象にならないので、別途そこの部分だけ遺産分割協議しないといけないということが起こりえます。銀行の支店名を間違った、不動産の所在地の漢字を間違ったといった書き間違いも、結局遺産分割協議をしなければならなくなります」

 ただ、そういう時にも奥の手がある。

「財産目録で書きたいことは書き、『財産目録記載の財産以外の一切の財産は全部誰々に相続させる』という条項を一つ書き加えておく。こうすれば書きもらしはなくなります」

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