「あの茂みが怪しいぞ」。子どもたちと生き物のいそうな場所を探します(写真/筆者提供)
「あの茂みが怪しいぞ」。子どもたちと生き物のいそうな場所を探します(写真/筆者提供)
激しい格闘の末捕まえた大物。黒光りするその正体は…(写真/筆者提供)
激しい格闘の末捕まえた大物。黒光りするその正体は…(写真/筆者提供)

「『川の生き物』という言葉を聞いたら、どんなことを頭に思い浮かべるかな?」

【写真】川で子どもたちが捕まえた大物の正体は…!?

 新プロジェクトを心待ちにしていた「ぷれりか」(幼児クラス)の生徒に問いかけます。

「小さい魚かなあ。例えばメダカとか」

「あと、小さいエビもね」

 最初の問いかけに考え込む様子を見せましたが、一人の発言をきっかけに少しずつ意見が出てくるようになってきました。

「小さい」というのが重要なポイントなのかとさらに突っ込んだ質問をすると、子どもたちはうんうんとうなずきます。川にはあまり大きな生き物がいないという認識があるようです。

「では、お父さん、お母さんはどうですか?」

 授業に一緒に参加する保護者の方にも聞いてみます。すると、具体的な生き物だけにとどまらず、「ヌルヌルした藻」や「石の下に(何かが)隠れている」といった感覚的なイメージを表す言葉が出てきました。子どもたちは大人の回答に興味津々の様子です。

 やがて、ぷれりかキッズもようやくエンジンがかかってきたのか、実体験を交えながら自分なりの発見を語り始めました。

「先週の遊びの日に鴨川に出かけたやろ。あの時、アメンボがたくさんいる場所あったで」

「アヒルが家の近くの川を泳いでいて、ご飯を食べてたよ」

「私、オタマジャクシを見たことある! オタマジャクシはカエルになるときに尻尾がなくなっちゃうんだよね」

「鴨って、頭を水の中に入れても沈まへんのが不思議やねんなあ」

 みんなの意見で模造紙が埋め尽くされていき、彼女たちの既有知識が明らかになっていきます。

 そんな中、つい先日、探究堂に通う小学1年生の男の子が鴨川の河原でオオサンショウウオと偶然遭遇したエピソードを紹介しました。

 彼に見せてもらった写真には、川辺の草むらからのっそりはい出たオオサンショウウオが写っていたのです。

「えーーーっ、どこに住んでるんやろ。私も見てみたい!」

 教室のボルテージが一気に上がり、子どもたちの好奇心に火がついたことを実感します。

 授業の前日は雨でした。そのため、川の水量が少し気がかりでしたが、今回の作業場所となる鴨川デルタに到着するとその心配は杞憂に終わりました。出町橋の下にレジャーシートを敷いて荷物置き場をつくり、早速準備に取り掛かります。

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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