稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
アマゾンもあなたのことをとてもよく知っている。買い物の好みについてあなたが知っている以上のことを……(写真:本人提供)
アマゾンもあなたのことをとてもよく知っている。買い物の好みについてあなたが知っている以上のことを……(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 無邪気に検索したり「いいね」を押したりしていたら、赤裸々すぎる自分の姿がグーグルやらフェイスブック(FB)やらに筒抜けに……と前回書いたら、担当デスクが「確かに、うっかり犯罪にでも巻き込まれて履歴を見られたら超はずかしい!」と感想をくださった。いやそれはそうなんだが、私が恐れたのはそれではない。

 そもそも平時に私ごときの個人情報に注目する人なんていないし、テロリストでもないんだから多少のプライベートが知られたところでどうってことない。ずっとそう思っていた。せいぜい台湾旅行の検索をしたら関連広告がやたら流れてくる程度。別に害はないしむしろ便利かもと。

 でも、きっとそういうことじゃないのである。

『GAFA』によると、300回いいねを押すと、私も知らない私のことをFBは知るようになる。我が検索に応じ続けているグーグルも同様。で、この情報がカネになる。なぜ? だって私は私の全てを彼らに知られている。無意識の領域までも。そんな私が誰かに操られることなどあまりに簡単だ。何かを買わせることはもちろん、怒りを焚き付け政治的行動をとらせることもできる。昨今、選挙のたびにSNSでフェイクニュースが流れて投票結果に影響を与えていると聞き、自分はそんなもんに踊らされるわけないと思っていたが、いやいや踊らされても全然おかしくない。

 私ったらいつの間にやら誰かの思いのままに動くコマだよ! そう思い始めたら友達のナイスな投稿にいいねを押すのもためらわれるようになった。

 で、そうこうしていると、やたらとFBが私にしつこく言い寄ってくる。友達の誰々が新しい投稿をしたとか、誰々は知り合いじゃないのとか、つれなくするほど日々何度も何度も連絡してくる。もしやFB……焦ってる? 私がいいねを押さないとそんなに困るわけ? そう思うとますます怪しく見えてくる。ますます足が遠のく。FB、結構楽しんでたのに。実に面白くない。どうすりゃいいんだ。

AERA 2019年6月24日号

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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