アメリカの定番ランチ、ピーナッツバター&ジェリーのサンドイッチ(左)。これにフルーツや野菜スティックを付ければ、アメリカ的には上出来です(写真/筆者提供)
アメリカの定番ランチ、ピーナッツバター&ジェリーのサンドイッチ(左)。これにフルーツや野菜スティックを付ければ、アメリカ的には上出来です(写真/筆者提供)

 日本の離乳食はもっと簡単でいいのではないかという話を先週しましたが、同じことが子どものお弁当にも言えるんじゃないかと思っています。

 お弁当って、つまりは持ち運びできる食事のことでしょう。胃を満たすため、栄養を摂取するためなら手作りでも市販品でもどちらでもいいはずなのに、なぜか日本では「冷凍食品ばかりだと子どもがかわいそう」とか「手間をかけるほど家族の絆が深まる」とか、単なる食事が愛情を図る器になってしまっている気がします。

 かたやアメリカのお弁当はというと、Instagramや Pinterestで「school lunchbox」などと検索していただければ一目瞭然なのですが、食材を切って詰めただけのものがほとんどです。クラッカーに野菜スティック、果物。スティックチーズやグラノーラバー、ディップソースなど、市販品もかなりの頻度で登場します。日本人の感覚からすると、お弁当のおかずというよりパーティーのフィンガーフードみたいです。

 インスタ映えする写真でフォロワーを増やしたい“ビジネスパパママ”も多いですから、上げられているランチボックス写真は、これでも気合を入れて作っているほうだと思われます。現実では、ジップロックにプレッツェルをガサッと詰めただけとか、りんごを丸ごとゴロンとバッグに放り込んだだけとか、もはやボックスに入っていないランチもよく見かけます。

 アメリカのお弁当があっさりしている理由としては、もともとランチは簡単に済ませる家庭が多い(働いていると昼食を抜いたりスナックで済ませたりする人も)、共働きの家が多く平日料理に時間を割いていられない、学校の昼食時間が短い、昼食の前におやつの時間がある、などさまざまな背景が考えられます。決して、子どもに愛情を抱いていないからではありません。

 さて、アメリカの定番ランチといえば、ピーナッツバター&ジェリー・サンドイッチです。略してPB&J。ピーナッツバターは、主成分がピーナッツの甘くないペースト。ジェリーは日本でいうジャムのことで、PB&Jに使うのはたいていブドウ(コンコードグレープ)ジャムです。サンドイッチのパンで炭水化物、ピーナッツバターでたんぱく質と脂質、ジェリーでビタミン、ミネラルがとれる完全食!(※注1)という具合に、老若男女から愛されています。食パン1枚にピーナッツバター、もう1枚にジェリーを塗り(※注2)、2枚くっつけたらハイ完成。1分もかかりません。

 このPB&Jにバナナを1本付け足したり、市販のヨーグルトを足したり、あるいは何も足さなかったりしてお弁当にするのです。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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