「すげーーーーー!!」

 予想外の結果に驚きと喜びを爆発させていました。

 実はこのペーパータオル実験には後日談があります。

 記録を樹立したことは嬉しいものの、彼は実験が時間切れに終わってしまったことがずっと心に引っかかっていたそうです。しかし、探究堂の授業時間内ではどうにも終わりそうにありません。

「やっぱり結果が気になるから、また今後、家で試してくるわ!」

 ペーパータオルの限界をどうしても知りたくなり、K君は週末の時間を使って自主的に実験の続きを行うことにしました。

 そして検証の結果、2時間かけて“1995個”のスーパーボールをすくうことができたと翌週の授業で報告してくれたのです。

 まさに彼の執念と粘り強さがもたらした成果と言えるでしょう。その後、K君はインターネットでポイの紙の材質と作り方を調査し、自分なりに納得する形でプロジェクトを終えました。

 素朴な疑問からスタートした小さな取り組みが約4カ月間に及ぶ壮大なマイプロジェクトへと発展を遂げました。

 ちなみにポイには和紙が張られているそうです。和紙と聞くと手漉きのイメージが強いですが、ポイの和紙は工場で生産されているとのこと。

 奈良県のとあるメーカーが自社ブランドとしてポイを製造販売し、そのメーカー分だけで国内シェアの約6割に達しているところまで突き止めることができました。

 もしかしたら早い段階で本やインターネットを用いていたら、自分が知りたかった情報にすぐにたどり着けたのかもしれません。しかし、彼は一見回り道にも見えるプロセスの中で、身の回りに存在するさまざまな紙の材質にまで興味を広げ、最終的にはポイの強度の絶妙さを実感することとなりました。

 体験知を積み重ねたからこそ得られた学びなのだと私は考えています。

(文/山田洋文)

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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