ミュージカルには、ある種の壮大さがつきものだ。運命的な愛があり、ときにその先に「死」が待っている。日常の延長とは言い難く、その世界に入る難しさはないのだろうか。

城田:意外と“日常”ですよ。作品にもよるけれど、物語自体は誰にでも当てはまるもの。少し色や形が違うだけで、本質は一緒だと思うんです。「ロミオとジュリエット」も、ストーリーだけ聞けば「それで命を絶つだろうか?」と非現実的に思えるかもしれない。けれど、敵対している国と国があって、敵国で暮らす人と恋に落ちたら、もしかしたら同じ選択をするかもしれない。「自分だったらどうするだろう?」と感情移入できるところまで持っていくのが、目指すゴールです。

 これまで何度も、「ミュージカルは突然歌いだすからリアリティーがないよね」という言葉を聞いてきました。もっとフラットに、歌は会話の延長にある、と感じてもらうことができたら。英語やスペイン語は、しゃべりことばに音の流れがあって、会話の先に歌があることはふつうです。でも、日本語は起伏が少なく、会話と歌で発声法が違う。できるだけそのラインを滑らかにすれば、違和感はなくなる。「いま歌っています!」というふうにはしないのが、僕のスタイルです。

 なにげない会話をメロディーにのせ、歌ってみせた。流れるような英語での歌と、いかにも舞台然とした日本語の歌、そして自身が目指す、自然な会話の延長線上にある歌。

城田:僕がやりたいのは、会話と歌の境界がない、リアリティーのあるミュージカル。コンサートでもオペラでもない。芝居のなかでどれだけ歌えるかということだと思います。

「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」など、数々のヒット映画を通じ、日本でもミュージカル自体が受け入れられるようになった気がしています。うれしいことに、ミュージカルと映像作品の両方で活躍する同年代の俳優も増えてきた。

 そんな中、ファントムという大きな舞台で主演と演出を担当させてもらうことになって、今までで一番高い山を登っていると思っています。未知の領域だけど、攻めの姿勢は崩さずいくつもりです。

 海外では、上演する演目のために作られた劇場もあり、劇場に入った瞬間に作品の世界に浸れる。日本でも、劇場に入った瞬間、作品の世界に誘える舞台を作りたい。いつか、日本発のオリジナルのミュージカルをつくりたい、という夢はずっと持っています。日本でつくられた作品が、日本でしっかりと受け入れられるようにしたいですね。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2019年6月17日号