※写真はイメージ(撮影/写真部・高野楓菜)
※写真はイメージ(撮影/写真部・高野楓菜)

 ブームの後には、反動が付きものだ。QRコード系の「○○ペイ」がここまで一気に増えてくると、競争に敗れて撤退するところが出てきても不思議はない。

「QRコード系の決済サービスは元々、極めて利幅が薄いビジネスです」

 そう指摘するのは、ITジャーナリストの三上洋さん(53)だ。シェア獲得のために各社がポイント還元など大々的なキャンペーンを打っているわけだが、裏を返せば赤字タレ流しの消耗戦を繰り広げているとも言える。

 クレジットカードをはじめとする決済サービスは、加盟店が負担する手数料が主な収入源だ。QRコード系の決済サービスは、その手数料を格段に安い水準にすることで、今までクレジットカードやおサイフケータイ系が開拓できなかった加盟店を獲得しようとしている。利幅が薄いのはそのためだ。

「大きなシェアを握らない限り、赤字が続いていくことになるでしょう」

 そのため、近い将来に淘汰が進んでいくと三上さんは予想する。

 現時点でユーザーが多いから安泰、とは限らない。大規模なキャンペーンでユーザーが急増していても、キャンペーンを打ち続けなければ、ユーザーはお得さを感じなくなり、利用が急減する恐れもある。携帯電話業界に詳しいジャーナリストの石川温さん(44)はこのような見解を示す。

「結局、決済の手数料以外でも儲けられるビジネスモデルを持っていることがカギとなってくるでしょう」

 実は、QR決済サービスへの参入が急増しているのは、国がキャッシュレス化を推進しているという追い風だけが理由ではない。決済サービスの大きな魅力は、企業がユーザーの購買履歴を入手し、それを他の事業におけるマーケティングに活用できることだ。決済そのもので大きな利益は得られなくても、他の事業に購買履歴のデータを生かして儲けにつなげられるなら、生き残りは可能だ。

「他のビジネスへと結びつけられるという点では、やはり楽天やLINE、NTTドコモ、auなどが強みを持っているでしょう。生き残るのは、ユーザーがずっと使い続ける仕掛けを講じられるところです」(石川さん)

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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