また最近では、ピューレ状の離乳食をスキップし、いきなり固形物をあげる方法も取られています。baby-led-weaning(赤ちゃん主導の離乳)と呼ばれる方法で、2010年頃からイギリスで広まり、アメリカでも人気があります。熟れた果物(洋ナシ、ラズベリー、バナナ)、よく火を通した卵の黄身、柔らかくゆでた野菜やパスタなどを、いきなり6カ月くらいの赤ちゃんにあげるのです。

 喉に詰まる恐れのある小さいもの(ナッツやレーズン、ポップコーン)や喉にからまるもの(ピーナッツバター)は絶対にあげてはダメだし、赤ちゃんのそばで様子を見ている必要はありますが、大人の食事と別に離乳食を用意する手間がなくなり、手づかみで食べられるのでスプーンで口に運んであげる必要もなくなります。赤ちゃんの自立を促し、手と目の動かし方や咀嚼力が発達しやすい、といったメリットも挙げられています。

 ここで述べたいのは、baby-led-weaningめちゃくちゃおすすめ!!ということではなく、いきなり固形物をあげる国もあるくらいだから、日本もそこまで離乳食の固さにこだわらなくてもいいんじゃない?ということです。わたしはおかゆの専門家にはちょっぴりなりかけましたが、離乳食の専門家ではありません。だから離乳食の進め方なんて適当でOKなんて安易に言えませんが、アメリカの離乳食を知った後では、日本の細かい指導方法に疑問を覚えるのです。

 日本語の豊かな味覚表現は、世界に誇れる財産です。でも、味覚表現は離乳食の時期を過ぎてからでも十分磨けるんじゃないでしょうか。もちろん離乳食作りが好きで得意な人はいいんですが、そうでない人(わたし)がゲッソリしながら子どもにごはんをあげていたら、むしろ食育には逆効果な気がします。離乳食、アメリカくらいのゆるさで進めてもいいのではないでしょうか。

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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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