樹木さんとはデビュー作のドラマ「時間ですよ」で出会って以来、45年の付き合いだった。多くのことを学んだという。
「女優という言葉が嫌いで、偉ぶるのも嫌い。『人としてちゃんと生きなさい、そうじゃないとちゃんと(芝居は)出来ない』といつも言ってましたね。ちょっとでも自信をなくしていると励ましてくれたし、『芝居に妙なクセがついてる』と言われて『あ、そうか』と気づかされたこともあった。でも『こうしなさい』とは絶対言わないんです」
結婚・離婚のときも、母を亡くしたときも、そばにいてくれた。実の親子以上に親密だった。
「突然『マツタケを送ってきたから美代ちゃん何か作って~』とか。『今、何もないよ』って言うと『いいわよ、ぬかみそあるでしょ?』って来て、ご飯食べたり。『も~ここのうちは、犬の毛がねぇ~』なんて言いながら、来るんです(笑)」
近年、浅田さんは動物愛護活動家としても知られている。
「『弱い者を助けることはすごくいいことだから、がんばんなさい』って言ってくれていました。希林さんも昔は猫を8匹飼っていたこともあるし、困っている人が近くにいたら、手を差し伸べる人でしたから」
その遺志を継いで進んでいく。
「あの感性と才能にはとても及ばないですけど、希林さんからいただいたもの、つけてくれた道を精進して、ちゃんとした役者になっていければいいなと思っています。でも本当のところ、まだいなくなった実感がわかないんです。電話がかかってきそうな気がしちゃう」
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2019年6月17日号