「トッカイの仕事は知恵を尽くして借金王たちの急所を突く、燃えに燃えるような仕事。『回収』という錦の御旗の下で失った自分を取り戻していったのだと思います」

 バブル崩壊後も闇は深い。その暗がりに一筋の光を当てた気骨のジャーナリストは、「語りにくい時代の、その一端を書いたという気持ちです」と笑った。(編集部・野村昌二)

■書店員さんオススメの一冊

『手で見るいのち ある不思議な授業の力』は、学ぶことの本質と喜びを教えてくれる、深い内容の一冊だ。Pebbles Booksの久禮亮太さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 私たちは日々膨大な視覚情報を浴びてそれを理解した気でいるが、それは錯覚ではないかと問い直したくなる。

 本書は、筑波大学附属視覚特別支援学校で40年以上続く生物の授業を紹介する。視覚障害を持つ中学1年生たちが動物の頭蓋骨標本を触り、思い思いに想像を膨らませていく。その骨がどんな動物かは知らされていない。教科書も板書もなく、生徒たちは自らの手で「見た」ものを自分の言葉で表現し考察を深めていく。

 先生たちは生徒の驚くべき観察力と探究心に応えようと、この授業を作ってきた。

 この授業のOBには、全盲の学生として日本で初めて大学で物理を学び宇宙開発に携わった方もいる。本書に登場する人々は、教える者と習う者の立場や視覚の有無を超えて、学ぶことの本質と喜びを共有している。それをとても羨ましく思う。

AERA 2019年6月17日号