イラスト:石山好宏
イラスト:石山好宏

「こちらが本日から我々と一緒に働いてもらうことになった新メンバーです。社員番号はR1150。煩雑で手間がかかる仕事でもバンバン引き受けてくれるのでよろしく」

 総務部長の脇で、皆の視線を一斉に浴びているのは、新人ロボット。といっても、外見は何の変哲もないノートパソコンだ。ベテラン社員がボソッと呟く。

「上司にの手も借りたいとは言ったけど、来たのはコイツかぁ。まずはお手並み拝見だな」

 こんな光景は、もう絵空事ではなくなった──。

 ロボットと聞くとソフトバンクのペッパーのような「人型」を思い浮かべてしまうが、いまオフィスに進出しているのは、RPA(Robotic Process Automation=ロボティック プロセス オートメーション)。これまで人間がキーボードやマウスを使って行ってきたパソコン操作を自動で代行してくれるソフトウェアだ。イメージがわかない人のために、会社でよくある「交通費精算」の事例で説明しよう。

 一般的な処理の流れは、(1)社員が交通機関を使った日時、経路、訪問先、運賃をエクセルなどで作られたフォーマットに記入 (2)上長の承認を受け社内システム上のフォルダに保存 (3)経理担当者がファイルを見ながら、経路検索サイトや地図アプリを開き、申請された経路が最適か、金額が合っているか確認 (4)間違いや不明点があれば、申請者にメールで再提出を依頼 (5)再提出されたファイルを確認。問題がなければ社内システムにデータを反映させて出金──。単純だがミスなく大量に処理するのはストレスフルな仕事だ。

 だがRPAは、(3)以降のプロセスを自動で進めてくれる。パソコンの画面上では、人が操作しているわけでもないのに、超早送りのように次々とファイルや経路検索などのウェブサイトが開かれ、先の処理が進行する。社内システムに入る必要があればRPAが自分の社員番号やパスワードでログイン。作業は1件あたり数十秒で完了だ。

 RPAが得意とするのは定型業務。主に人事・総務・経理などバックオフィス系の仕事だ。導入が早かったのは定型業務が多い金融業界だったが、いまやあらゆる業種に広がり、中小企業や自治体でも普及が進む。手書きの文書も識別できる技術が開発されるなど応用範囲も広がり、市場規模は2018年度には前年度比2.3倍の418億円に。22年度には800億円を超えると見込まれている(いずれも矢野経済研究所の予測値)。

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